素人がQuadCortexをざっくりレビューする
予約していたQuadCortexの順番が回ってきたので、大枚を叩き入手してみました。
10月頭から3週間ほどギターとベースの両方で使ってみて気づいた点を、元々使用していたHelix LTと比較しながら書いていきます。
最高なところ/致命的にダメなところ
真っ先に挙げられる良い点は軽量なところですね。
ハイエンドなフロア型マルチ同士で比較してみると、群を抜いて軽いことが改めてわかります。
巨大なエフェクターボードを組んでいる方からすると、Helix LTの重量でも「まだいけるだろ」とも思えるぐらいではありますが、持ち運びに相当苦労していた身としてはこの軽さは驚異的です。
参考までに公称値を載せておきます。
- Helix:6.6kg
- Helix LT:5.7kg
- KEMPER PROFILER STAGE:4.6kg
- QuadCortex:1.95kg
また、元々コンパクトなことも相まって、ギグバッグのポケットに入れて持ち運べるようです。(まだ自分では試せていません)
おー、quad cortexは横幅余裕無いけどmonoのguitartickに収まった。これでついにカート無しでスタジオやらライブに行けそう。 pic.twitter.com/qwO7fTFgYb
— pnpk (@pnpknet) June 9, 2021
一方致命的な点がひとつあります。
それがシャットダウン時のノイズです。
XLR outにスピーカーやアンプ等を繋いだままシャットダウンすると「ブツッ」という割と大き目な音が鳴ります。
これはQC側のボリュームをゼロにしても消えませんので厄介な問題です。
公式はQCをシャットダウンする前にスピーカーやアンプ側の電源を落とす等の対策を推奨していますが、そんなめんどくさいことを現場でするのは困難ではないでしょうか?
(調べた限りだと日本語で問題視している人を見つけられなかったので、皆さん何かしらの対策をしているのでしょうか…?)
いずれにせよ非常に重要な問題だと思うので、ソフトウェア側でどうにかなるのであれば今後のアップデートに期待したいところです。
それでは使ってみて良かった点・イマイチだった点を挙げて解説していきます。
良いところ/ダメなところ
Neural Captureが凄いといった点ばかりが注目されていますが、そういった大きなポイントはここでは省略して、実際に使ってみて気づいた細かいポイントを深掘りしていこうと思います。
- 使えるアンプモデルやエフェクトが増えた。
Helixを使っていて「このアンプモデルってこんな変な音がするの?」とか「このエフェクター、実機と全然音が違うんじゃないか」というモヤモヤを抱えることが多々ありました。
それを念頭に置いてQCを使ってみると、実機のクセは掴みつつもEQ等がフラットでも即使えるようにチューニングされているような印象を受けます。
特にすごいのが最近のアップデートで追加されたFuzz Faceのモデリングです。
これはギター側のボリュームを下げたり、ハムバッカーとシングルでの出力差による挙動の変化等を再現するためのパラメータを増やしており、特にPICKUP VOLUMEの値を弄ることでガラッと音が変わります。(実機のような鈴鳴りからクランチサウンド等を再現したり出来ます)
まだまだ本物には敵わないまでも、Helixで感じていた「ファズは結構微妙だな…」という印象が拭えるくらいには進化していると思います。
あとは今後のアップデートでFuzz Factoryのような発振系を入れてくれたら最高ですね。 - 操作性の改善
やはりフルカラーディスプレイにタッチパネルを搭載したメリットは大きいです。
Helixでボタンやツマミをカチカチしながらしていた操作の大半がタッチ操作に置き換わったのは良い点です。
一方気になるのが、フットスイッチやディスプレイ自体の耐久性です。
私はHelix LTを中古で購入したのですが、使用し始めてからすぐにエクスプレッションペダルが「ギィギィ」と言い始め、今度は1年ぐらい経ってから使用頻度の高いフットスイッチの接触が悪くなってきました。
この点を踏まえるとこの先どれだけ活躍できるか不安が募ります。
特にフットスイッチはツマミを兼用しているという複雑な構造ゆえにどれだけ持つのでしょうか?
- アサインできる操作の少なさ
Helixではスナップショットを用いてプログラマルスイッチャーのような複雑な操作切り替えをフットスイッチ一つで行えました。
これはQCでもSCENEモードでほぼ再現が出来ます。
ただHelixではスナップショット以外でも、コマンドセンターを使うことでプリセット切り替えとエフェクトの切り替えを同じモードで行えます。
また、1フットスイッチに複数の機能をアサイン出来ることを利用して、アンプの切り替えをスナップショット以外でも行うことが出来る等、結構万能だったんですね。
これがQCになるとSTOMPモードでは1フットスイッチで出来る操作は1エフェクトのON/OFFだけだったり、エクスプレッションペダルのToeスイッチを利用してボリュームとワウを切り替えたりするような複雑な操作は出来ません。
これらを「よくわかんない項目が多いから怖くて触れない」ことの解消と捉えるか、「高額なくせして出来ることが少ない」と捉えるかはユーザー次第なところでしょうか。 - アンプモデルで弄れるパラメータが減った
Helixではバイアス等のパワーアンプ側の挙動もシミュレート出来ました。
しかしながら、QCではこれらの項目が一切ありません。
私はこれらのパラメータを弄ったことがないのでダメージは少ないのですが、使い込んでいたユーザーにとっては地味に痛手になるんじゃないかと思います。 - やはりまだまだエフェクト数が足りない
万人受けするようなアンプやエフェクトは現時点ではほぼ入っています。
一方、特定のユーザーに刺さるようなニッチなもの、地味にあると便利だなといったものは無いのが現状です。
また、まだまだベース系のアンプとエフェクトが少ないです。
これを補うように結構な数のNeural Captureがプリインストールされているのですが、ここはHelixでも手薄だった点ではあります。
開発経緯を考える(ベースに強いDarkglassと結びつきが強い点)と、今後のアップデートで解消されることに期待です。 - コンパクトだが…
Helixは7㎝四方でフットスイッチが配置されています。私のように足の大きな人だと、これでもちょっと狭いかなと思うくらいでした。
一方QCは左右が6.5㎝で上下が5㎝間隔で配置されています。
実際に踏んでみると結構キツキツだと思いました。 - PC用エディタが無い
今後HX Editのようなアプリがリリースされる可能性もありますが、今のところQC本体の遠隔操作は出来ません、
そのため足元に本体を置いている場合、腰を屈めて操作する以外の方法が無くなります。
(Helixだとペダルエディットモードがあるため、足だけでエフェクトのゲインやボリューム等を弄ることも出来ます)
私の場合、やはり手元で操作したかったことから、QC本体は卓上に置くことにしました。
- アサインできる操作の少なさ
- 結局は上記の理由(フットスイッチにアサイン出来る操作の少なさや故障を避けるため等)から、コンパクトさを犠牲にして多機能なMIDIフットスイッチを追加することにしました。
自宅で使用する際はしばらくこのシステムでいきますが、スタジオやライブでどうするかは未定です。
終わりに
一応機械学習関連の仕事をしているので、こういったモノにAIが搭載されたことへの感動や興奮は大きかったんですが、実際に使ってみるとまだまだ課題点も多いですね。
また、発売自体はされましたが、現状易々と入手できない点やセカンドロッドから早くも値上げしたりなど、敷居の高いデバイスであることは間違いないです。
そして、まだまだ発展途上だなという印象も強いです。
KEMPERリグのように今後公開されていくキャプチャも増えていくでしょうし、機能追加が予定されている既存プラグインが使えるようになれば更に使えるマルチプロセッサーとなるでしょう。
ですので、現状買いかと言われると結構微妙なところです。
あまり踏み込んだことは書けませんでしたが、参考になれば幸いです。
ここどうなってるの?等の質問もお待ちしています。(あくまで素人なので、プロミュージシャンのような高度な質問にはお答え出来ないかもしれませんが…)